毎日出入りする場所だからこそ、考えておきたいこと
家づくりを始めたころ、わたしは玄関のことをほとんど考えていませんでした。リビングの広さとか、キッチンの使いやすさとか、長くいる場所のことばかり気にしていて、玄関は「靴が入ればいいかな」くらいの気持ちだったんです。
でも実際に暮らしてみると、玄関って一日のうちに何度も通る場所でした。朝、子どもを送り出すとき。買い物から帰ってきたとき。宅配便を受け取るとき。そのたびに、ここがごちゃごちゃしているかどうかで、気持ちがけっこう変わります。
このサイトでは、玄関まわりで考えておくとよかったことを、実際に暮らした感覚でお話ししていきます。まずは全体の話から。
玄関に置くものは、靴だけじゃなかった
これが、わたしがいちばん見誤っていたところです。
設計の打ち合わせでは「靴が何足入るか」という話をしていました。家族4人分の靴を数えて、これなら足りるね、と納得して決めたんです。
ところが住み始めてみると、玄関に置きたいものは靴だけではありませんでした。
- 子どもの外遊びの道具(なわとび、ボール、砂場セット)
- 傘。しかも家族分あって、濡れたまま置く場所がいる
- ベビーカー、そのあとは自転車のヘルメット
- 掃除道具、玄関まわりを掃くほうき
- 宅配の段ボール、資源ごみに出すまでの置き場
どれも「家の中には持ち込みたくないけど、外には出しっぱなしにできないもの」です。これが全部、玄関のたたきに並ぶことになりました。
靴の数だけで考えていたので、当然、入りきりません。結局いまも、一部は外の物置に置いています。
数えるなら「持ち帰ってくるもの」を数える
もしこれから打ち合わせをされるなら、靴の数ではなくて、外から家に持ち帰ってくるものを書き出してみてください、と伝えたいです。
頭の中で思い浮かべると、どうしても靴とコートくらいで止まってしまうので、紙に書き出すのがおすすめです。一週間ぶんを思い出すだけでも、ずいぶん増えると思います。
土間の広さは、使い方で決まる
玄関の靴を脱ぐ場所、いわゆる土間の部分です。ここは「広くしてよかった」という声も、「広くしすぎた」という声も、どちらも聞きます。
わたしの家は、設計の途中で少しだけ広げました。そのときの理由は「ベビーカーを畳まずに置きたいから」でした。
実際に住んでみて、この判断はよかったと思っています。でも、よかった理由は想像と違っていました。ベビーカーを使う期間は思ったより短くて、今はそこに子どもの自転車が置いてあります。そのあとはたぶん別のものが置かれるんだと思います。
つまり、広げたことがよかったのではなくて、何にでも使える余白ができたことがよかったんですね。
広ければいい、わけでもない
ただ、土間を広くすると、そのぶん家の中のどこかが狭くなります。限られた面積の中でやりくりしているので、当たり前なんですが、打ち合わせ中は忘れがちです。掃除する面積も増えます。砂や土が落ちる場所なので、ここは正直に書いておきますね。
見学に行ったときは、広さそのものよりも「そこに何が置いてあるか」を見せてもらうといいと思います。空っぽの土間はどこも広く見えるので、置いてある状態を見たほうが実感がつかめます。
収納は「扉の中」だけで考えない
玄関の収納というと、下駄箱やシューズクロークのような、扉のついた収納を思い浮かべますよね。わたしもそうでした。
でも暮らしてみると、玄関には「しまう」ものと「置く」ものの両方があることが分かりました。
しまうもの、置くもの
季節外の靴、来客用のスリッパ、しばらく使わない道具。こういうものは扉の中にしまって大丈夫です。
一方で、毎日使う靴、今日持って出る鞄、すぐ出したい傘。これを扉の中に入れると、毎回開け閉めすることになります。朝のばたばたしているときに、これが地味にストレスでした。
なので、扉のない棚やフックを少しだけ混ぜておくと、ぐっと楽になります。全部隠そうとすると、かえって散らかって見える、という逆転が起きるんです。
高さと奥行きのこと
もう一つ、作り付けの収納を入れるなら、棚の高さを変えられるかどうかを確認しておいてください。
子どもの靴は、数年でサイズが変わります。固定の棚だと、上に大きな隙間が空いたまま使うことになって、もったいないんです。わたしの家は可動式にしてもらったので、今のところ無駄なく使えています。
奥行きは、深ければいいというものでもありませんでした。奥に置いたものは、見えなくなって忘れます。これは今もときどきやってしまいます。
家族それぞれの「帰ってきたあと」を想像する
玄関は、家族全員が同じように使う場所ではありませんでした。
夫は、帰ってきたら上着をかけて、鞄を置いて、そのまま洗面所に行きます。わたしは買い物袋を持っているので、できればキッチンに直行したい。子どもたちは、ランドセルと上着を放り出して、リビングに走っていきます。
この三つの動きが、全部同じ玄関から始まるんです。
動きの線を、人ごとに描いてみる
図面を見るときに、玄関から自分がどこへ行くかを指でなぞってみてください。それを家族の人数分やってみると、重なるところと、ぶつかるところが見えてきます。
わたしの家は、玄関から洗面所に寄れる形にしてもらいました。子どもが帰ってきてすぐ手を洗えるので、これは入れてよかったと思っています。ただ、ここも完璧ではなくて、朝の身支度の時間帯は人が集まって渋滞します。何かを立てれば、どこかは立たないものなんだなと思いました。
玄関の不満は、玄関だけの問題じゃないこともある
ここまで、新しく家を建てる前提で書いてきました。でも、今のお住まいの玄関に不満があって、ここを読んでくださっている方もいると思います。
玄関が狭い、暗い、収納が足りない。こういう不満は、玄関だけを直して解決することもあれば、家全体の形から来ていることもあります。間取りの都合で玄関に面積を回せていない、とか、そもそも建物の向きで光が入りにくい、とか。
そういうときは、今の家をどうするか、作り直すという選択肢も含めて考えてみると、見え方が変わってくることがあります。部分的に直すほうが合っていることもありますし、一度まとめて考え直したほうが結果的にすっきりすることもあります。どちらがいいかは、建物の状態と、あと何年住むかによって変わってきます。
どんな考え方で作られた家なのか、を見る
最後に、これは家づくり全体の話になるんですが。
玄関の収納の話をしていると、結局「暮らしの流れをどう考えているか」という話になります。靴の数で決めるのか、持ち帰ってくるもので決めるのか。隠すことを優先するのか、取り出しやすさを優先するのか。
これって、玄関だけの考え方ではなくて、その家をどう作るかという考え方がそのまま出ている部分なんですよね。だから会社を選ぶときも、間取りの良し悪しを比べるより先に、どんな考え方で家を作っているのかを見ておくほうが、話が早いと思います。暮らしから考えてくれる相手なら、玄関の細かい寸法は一緒に詰めていけます。
これから家づくりをする方へ
玄関は、家の中で最初に作られて、最後まで毎日使う場所です。でも打ち合わせの時間でいうと、たぶんいちばん短い場所でもあります。わたしもそうでした。
だからこそ、少しだけ時間を取って考えてみてほしいなと思います。紙に書き出すだけでも違いますし、見学のときに「ここ、何を置いていますか」と一言聞くだけでも、ずいぶん具体的になります。
そして、まだ何も決まっていない段階でも、一度相談してみるという進め方があります。わたしも最初は「こんな漠然とした状態で行っていいのかな」と思っていましたが、話しているうちに自分が何を気にしているのかが分かってきました。玄関の話から始めても、ちゃんと家全体の話になっていきます。